訪問診療を行う医療機関の選び方
在宅医療が普及しない理由
「訪問診療」とは、通院が困難で自宅などの居宅での療養を希望する患者様のために、居宅に医師が伺い診療を行うことをいいます。患者様が生活しているご自宅や、介護施設(グループホーム、介護付き有料老人ホーム等)などの施設を訪問して、診療や治療を行います。
在宅クリニックが行う「訪問診療」の対象となる患者様は、自宅などで療養中であり、1人では通院が困難な方になります。外出が困難な寝たきりの方をはじめとしまして、車いすで生活をする方や目が離せない認知症の方、医療機器を装着していることで移動に制限がある方など、通常の外来への受診が困難な方々が想定されています。
しかしそれ以上の細かい規定が無いことから、利用する側の患者様やご家族様からはハードルが高いと思われがちで、「介護度がどの程度のタイミングで利用できるのかが判らない」といった声が聞かれます。病院からの退院時には、病院のソーシャルワーカーやケアマネジャーなどからのアドバイスがもらえて最寄りの在宅クリニックを紹介していただくことができますが、普段のかかりつけ医の医療機関において訪問診療や往診を行っていない場合には、頼る人がいないことから自分で訪問診療を行っている在宅クリニックを探さなければなりません。
この「自分で探すことがハードルが高くなる部分でもあり、それならば気心の知れた現在の主治医の先生の所へ多少ご高齢の患者様の身体への負担がかかっても外来通院を続ける選択となります。
団塊の世代が高齢化して後期高齢者へ
ここで、戦後のベビーブームで生まれた世代、1947年から1949年生まれを「団塊の世代」と呼びます。この団塊の世代の人たちが2025年には75歳以上となり、その人数は800万人に上るとされています。それまでの後期高齢者1,500万人と合わせますと、2,300万人を超え、日本国民の5人に一人が75歳以上の後期高齢者となる超高齢化社会へと突入します。
この問題は社会や経済へ与える影響が大きいとされ、物流クライシスの「2024年問題」につぐ「2025年問題」と呼ばれており、中でも医療に対する影響が最も大きいとされているのです。後期高齢者の人数が増えれば、比例して体力低下や寝たきりの状態にある高齢者は増え、認知症患者の人数も増えることが想定されています。
にもかかわらず、国は増え続ける医療費を抑制するべく入院患者用のベッド数を削減する方向で動いており、わが国の必要病床数はこの20年で30万床以上少なくなり、2025年には115~119 万床程度とする計画です。
そこで、医療や介護を必要とする高齢者や患者の受け皿として、在宅医療が推進されるようになっています。が、この後期高齢者が増加して需要が増えることに対して訪問診療を行う医療機関の数は非常に少なく、診療所全体の19.7%で2割程度となっています。(2020年 厚生労働省)
在宅医療を考える訪問診療への入り口
実際に入院を選ばずに自宅で在宅療養を選択して訪問診療を利用しようとなった場合、一般的にはどのような場面で利用を開始することが多いのでしょうか。
- 病院からの退院時
疾患の悪化や転倒して骨折した場合など、入院となりますと寝たきりの状態が長く続き退院時には入院前と比べても大きく身体機能が低下します。入院前は一人で通院ができていた方でも、退院後には介助が無いと通院が難しくなることがあります。
- 高齢化や病気の進行により通院が困難になる
高齢化による体力の低下や認知症の進行などにより介助が必要となり、通院が困難になります。
- 終末期で在宅での看取りを行う
ガン末期などで、自宅での看取りを希望する場合に訪問診療を利用します。疼痛緩和ケアで注射や点滴などが必要となり訪問診療と訪問看護が必須となります。
訪問診療の利用を始めるきっかけとしては、
- 病院の相談室または連携室の退院支援看護師へ相談する
- ケアマネジャーか地域支援包括センターの相談員へ相談する
- 通院しているかかりつけの医師へ相談する
- 訪問診療を行っている近くの医療機関へ直接相談する
病院からの退院時に医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーなどが関わることで、病院で入院治療を受けた高齢者や患者様を、退院時に在宅医療へとつなぐ流れが一般的となっています。
在宅医療の提供体制に求められている医療機能は、主に次の4つです。
- 退院支援
入院医療機関と在宅医療に関わる機関とが連携・協働して継続的な医療を行う
- 日常の療養支援
多職種と連携し、患者や家族の生活を支える医療を提供するとともに、緩和ケアの提供ならびに家族への支援も行う
- 急変時の対応
在宅療養の患者の病状が急変した時の往診や訪問看護体制の導入、入院病床の確保を行う
- 看取り
住み慣れた自宅や介護施設など、患者が希望する場所で看取りを実施する
数字には表れない在宅医療の「質」
高齢者や患者様が在宅療養を行うためには、上記の医療機能の「①退院支援」と「②日常の療養支援」は介護保険の施行などにより整備されてきており、実現がしやすくなってきています。
さらに在宅医療では①②に続く「③緊急時の対応」と「④看取り」が重要であり、24 時間365 日のコール体制が必要不可欠となっています。そこで、在宅医療を行う医療機関ではこの24時間対応の「在宅療養支援診療所」の施設基準を満たす必要が求められます。
ところが、この「在宅療養支援診療所」は、在宅医療を行う医療機関の約6割にとどまっており、残りの4割は24時間の対応は行っていないことになります。さらに、在宅での看取りに対応している診療所・病院はさらに少なく、全体の5%前後ともいわれます。
また、多くの在宅医が日々の訪問診療をしていく中で、診療の質を引き上げるには何が必要と考えているか、それは時間や人員の確保を上回り、「往診で使用できるコンパクトな医療機器の充実」や「電子カルテと連動する携帯用IT機器」の充実をあげています。(m3.com)
これら小型で診療現場へ持ち込める医療機器があれば、より正確な診断を行うことができ、ご家族様への説明や提案の幅を広げることができます。
在宅医療を始めようとする際に、右も左もわからない状況で最初から先のことを考えるということは難しいかもしれませんが、多くの在宅患者様やご家族様が希望する「最期のその時まで住み慣れた自宅で過ごす」を実現できるかどうかは、その在宅医療を行う医療機関の診療体制や方針に大きくかかっているということになります。
患者様にとっては一度きりの人生ですから、最初の医療機関選びが重要ということになります。
在宅医療を始めるにあたって準備すること
住み慣れたご自宅で在宅医療を始めようと考えた際に、まず必要な準備は「かかりつけ医」がいるかどうかです。かかりつけ医は、介護保険を利用する際にも主治医意見書などを依頼しますので必要です。
- かかりつけ医へ確認
かかりつけ医がいる場合には、往診や訪問診療が可能かどうかを確認します。
訪問診療が行える医療機関は全体から見ても少ないため、往診ができない場合には訪問診療を行う医療機関向けに紹介状を書いてもらいます。
なお訪問診療を受けながら、専門性が高い病院や診療所の外来へ通うことは可能です。 - 介護保険の準備
医師の訪問などの医療行為は医療保険の対象になりますが、訪問看護や訪問ヘルパーの介助などは介護保険で行うことになります。
在宅介護支援センターなど自治体の介護保険の担当窓口に、要介護認定の申請をします。申請から介護度の決定までに1か月ほどかかることもありますので、早めの準備が大切です。 - 訪問看護の準備
医師の訪問時以外は、訪問看護師が医師の指示に基づいて医療行為や処置を行います。
- 訪問薬剤師の準備
高齢になりますと、服用する薬の量も多くなる傾向にあります。このため、薬剤師が自宅を訪問してお薬を配達してくれて、飲み方の説明や残薬の管理など訪問服薬指導を受けることができます。
薬剤師の配達訪問も可能な薬局は限られますので、お問い合わせが必要です。 - 訪問歯科の準備
歯と口のトラブルは全身の健康状態にも影響します。口腔内が不衛生になると口腔内の細菌により誤嚥性肺炎を引き起こしたり、認知症が進行するとされています。このため、口腔内の衛生管理は高齢になるほど重要度を増すことから、訪問診療と一緒に同時に訪問歯科による歯の治療や口腔ケアの検討が必要です。
これらサービスを継続していくには、家族内の誰か一人に負担がかからないよう、病院・診療所・歯科・薬局・訪問介護事務所・居宅介護事務所・地域包括支援センター・短期入所サービス施設などの多職種、多機関と連携を図り、24時間体制で在宅医療を提供していく必要があります。
一人暮らしの人でも、これらのサービスをうまく利用することによって、在宅医療による療養生活を送ることができます。また高齢者夫婦世帯でも同様で、どちらかが頑張り過ぎて疲れてしまわないようにプランを作成することも可能です。
訪問診療は緊急対応や看取りの経験が豊富な医療機関がいい
安心して在宅療養生活を送るためにも、在宅医療では在宅療養に関した知識を豊富に備えて頼りになる訪問診療医のいる医療機関を見つけることが重要です。
在宅療養支援病院・診療所には「機能強化型」というものがあり、医師の人数や連携、緊急往診の数、看取りの実績などの基準を満たすことが条件となり指定されます。つまりは、「機能強化型」を掲げるクリニックでは、24時間365日の夜間休日の緊急対応や看取りの経験が豊富であるということになります。
高齢者の治療で定期的な通院を行っており、いずれは在宅医療を受けたいと考えている場合には、ある程度元気で通院ができる状態のうちから訪問診療を行っている在宅療養支援病院や診療所をチェックしておくと良いでしょう。がんの治療を行っていれば、がんの緩和ケアができるかどうかも含めて探す必要があります。
普段から療養生活はどのように過ごしたいのかをイメージしておき、通院が大変になってきたところでスムーズに訪問診療へ移行できるようになっているのが理想です。
港北メディカルクリニックでは、在宅医療にも力を入れた診療を行っており、「特定機能強化型在宅療養支援診療所」の認定を2012年より受けております。在宅医療に豊富な知識を持ち、内科専門医の他に各疾患への専門性が高い専門医を配置しています。
さらには往診用で小型の医療機器も充実しており、ご自宅へこれらの機材を持ち込み病院の外来で行う検査等と同じ検査ができる体制を整えておりますので、どうぞご安心ください。
私どもは安心して療養生活の一端をお任せいただけるよう、これら診療体制を整えていますので、些細なことでも結構ですのでお気軽にお問い合わせください。
TEL/045-595-2660
港北メディカルクリニック 概要
- 院長
- 大澤 浩
- 標榜科目
- 内科、呼吸器内科、循環器内科、糖尿病内科、 消化器内科、アレルギー科、精神科
- 診療時間
- 午前 9:00~13:00 午後 15:00~18:00
- 休診日
- 土曜日午後、日曜日、祝祭日
- 住所
- 〒224-0027 神奈川県横浜市都筑区 大棚町3001-8
- 電話
- 045-595-2660
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- 045-595-2661
- アクセス
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※駐車場完備
センター北駅より徒歩8分
医療法人社団 凰和会理念
(医療ポリシー)- 目標
- 私どもは、患者様に最高のクオリティ-を提供することで、パーソナルなサービスを求める患者様のご要望以上を満たすようケアサービス追及をしてまいります。
- 信条
- 私どもの最大の財産であり成功の鍵ともいえるのはスタッフ一人ひとりです。職務に当たっては各スタッフが尊敬とプライド、そして満足感を抱いていることが大切だと考えます。患者様に最高のサービスを提供し、そのサービスにご満足いただくためには、多くのスタッフの協力が不可欠です。スタッフの相互協力、そして貢献と価値を尊重し合うことが、最高のサービス実現への鍵だと考えております。
- 行動規範
- 私どもは互いの接し方そして相手に対する範の示し方を通じて私どもの理念を実行しています。患者様であれ、提携先であれ、スタッフ間であれ、常に自分がそうして欲しいと思う対応で相手に接しております。